第109回 薬剤師国家試験問題 問329(CYP3A4阻害) | 積小為大!!  健康・社会保険・労働に関すること

第109回 薬剤師国家試験問題 問329(CYP3A4阻害)

実務
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問329(実務)

72歳男性。体重60kg。

10年前に大学病院の腎臓内科にてネフローゼ症候群と診断され

プレドニゾロン錠とフロセミド錠による治療が開始された。

昨年ステロイド抵抗性との診断を受けてシクロスポリンカプセルが追加され、治療中である。

某年8月9日に近隣の皮膚科を受診したところ、

爪白癬との診断を受け、イトラコナゾールの投与を推奨された。

同日、大学病院の腎臓内科よりイトラコナゾールカプセルの処方が追加され、

最終的に処方1~4のように調整された。

9月6日の診察にて経過良好とのことから、治療は同じ処方で継続された。

 

(処方1)

プレドニゾロン錠5mg    1回 4錠(1日4錠)

フロセミド錠40mg     1回1錠(1日1錠)

1日1回     朝食後    28日分

 

(処方2)

イトラコナゾールカプセル50mg    1回4カプセル(1日8カプセル)

1日2回    朝夕食直後    7日分

 

(処方3)

シクロスポリンカプセル  50mg    1回 1カプセル(1日2カプセル)

1日2回    朝夕食前   7日分

 

(処方4)

シクロスポリンカプセル50mg      1回 2カプセル(1日4カプセル)

(処方2及び処方3を飲み終えてから飲んでください。)

1日 2回    朝夕食前   21日分

 

(9月6日の検査値)

血清クレアチニン 1.3mg/dL、eGFR 42.7mL/min/1.73m2

血清アルブミン 3.1g/dL、尿蛋白(±)、下肢の浮腫(±)

本日9 月13日、昨夕より四肢のむくみと尿の泡立ちがひどくなったと自覚したため、かかりつけ薬局へ相談に訪れた。

 

対応した薬剤師は患者からの聞き取りに加え、9月6日の検査値を確認した。

 

(聞き取り内容)

・処方1のお薬は以前と変わらず飲んでいる。

・処方2のお薬は全て残っている。

・処方3のお薬は残っていない。

・処方4のお薬は全て残っている。

 

今回の患者の主訴である四肢のむくみと尿の泡立ちについて、腎臓内科医に提案する内容として適切なのはどれか。2つ選べ。

 

1.シクロスポリンの血中濃度測定

 

2.イトラコナゾールの血中濃度測定

 

3.処方1の中止

 

4.処方2及び処方4の開始

 

5.処方4の開始

 

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問329の解説

設問の患者は、ネフローゼ症候群と爪白癬の治療をしています。

(※ネフローゼ症候群とは、糸球体疾患が原因で、尿タンパク排泄量が3.5g/日を超え、血中のアルブミン濃度が、3.0g/dL以下となり、尿の泡立ち・浮腫み・体重増加・腹水などがみられる疾患です)

 

 

以下の①~③を基礎知識として問題を解きます。

①イトラコナゾールをパルス療法(1週服用、その後3週休薬を3サイクル繰返す)で服用しており、休薬期間中は、シクロスポリンを増量(処方4)しています。

②イトラコナゾールは、CYP3A4阻害作用を持つ代表的薬剤です。

③シクロスポリンは、CYP3A4で代謝される薬剤で、TDM対象薬剤です。

 

 

1.「〇」設問より、患者は、イトラコナゾールを服用しておらず(CYP3A4を阻害されていない状態)、処方3の量で、シクロスポリンを服用していたため、ネフローゼ症候群の症状(四肢のむくみと尿の泡立ち)がでたと考えます。

 

シクロスポリン(ネオーラル):免疫抑制剤(カルシニューリン阻害)

ヘルパーT細胞の活性化シグナル伝達におけるカルシニューリンを阻害することにより、IL-2などの産生が抑制され免疫抑制作用を示します。

 

 

2.「×」イトラコナゾール(イトリゾール):抗真菌薬

真菌細胞膜の構成成分であるエルゴステロールの生合成を阻害して抗真菌作用を示します。

 

 

3.「×」プレドニゾロン(プレドニン):ステロイド

フロセミド(ラシックス):ループ利尿薬

 

 

4.「×」イトラコナゾールを服用している(CYP3A4が阻害されている)状態で、処方4の量のシクロスポリンを服用すると、シクロスポリンの血中濃度が有効域を超えることが考えられます。

 

 

5.「〇」設問より、患者は、イトラコナゾールを服用していないため(CYP3A4を阻害されていない状態)、処方4の量のシクロスポリンを服用し、シクロスポリンの血中濃度を測定することを医師に提案します。

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