問272-273(薬剤/実務)
53歳男性。以前から、A病院内科で高血圧症、脂質異常症、糖尿病、胃潰瘍、腰痛症に対して治療を受けており、症状は安定していた。
最近、仕事のストレスのためか気分が落ち込むことが多く、食欲不振、不眠などが続くため、B心療内科を受診した。
うつ病と診断され、処方箋を持って、かかりつけの薬局を訪れた。
(処方)
フルボキサミンマレイン酸塩錠25mg 1回1錠(1日2錠)
1日2回 朝夕食後 14日分
(薬歴に記載されていたA病院内科での処方内容)
ニフェジピン徐放錠20mg 1回1錠(1日1錠)
1日1回 朝食後 14日分
シンバスタチン錠5mg 1回1錠(1日1錠)
1日1回 夕食後 14日分
メトホルミン塩酸塩錠500mg 1回1錠(1日2錠)
ファモチジン口腔内崩壊錠20mg 1回1錠(1日2錠)
1日2回 朝夕食後 14日分
チザニジン錠1mg 1回1錠(1日3錠)
1日3回 朝昼夕食後 14日分
問272(実務)
かかりつけ薬剤師が処方監査した際、心療内科と内科の処方薬剤の中に併用禁忌の組合せがあるため、疑義照会を行うこととなった。
その疑義照会の原因となる薬剤はどれか。1つ選べ。
1.ニフェジピン徐放錠
2.シンバスタチン錠
3.メトホルミン塩酸塩錠
4.ファモチジン口腔内崩壊錠
5.チザニジン錠
問272の解説
1.「×」ニフェジピン(アダラートⓇ):Ca拮抗薬
2.「×」シンバスタチン(リポバスⓇ):HMG-CoA還元酵素阻害薬
CYP3A4阻害作用を有する、アゾール系抗真菌薬と併用すると、横紋筋融解症がおこりやすくなるため、併用禁忌です。
3.「×」メトホルミン(メトグルコⓇ):ビグアナイド系血糖降下薬
過度のアルコールを摂取した状態では、乳酸アシドーシスがおこりやすくなるため、併用禁忌です。
4.「×」ファモチジン(ガスターⓇ):H2受容体拮抗薬
5.「〇」チザニジン(テルネリンⓇ):中枢性のα2作動作用による筋緊張緩和薬
フルボキサミンと併用すると、フルボキサミンがCYP1A2を阻害することにより、チザニジンの血中濃度が上昇し、過度な血圧低下などがおこりやすくなるため、併用禁忌です。
問272の解答:5
問273(薬剤)
前問の薬剤を選択した理由に最も深く関係する機序はどれか。1つ選べ。
1.胃内pHの上昇
2.小腸CYP3A4発現量の増加
3.小腸P-糖タンパク質発現量の増加
4.肝CYP1A2の阻害
5.肝CYP3A4の阻害
問273の解説
1.「×」
2.「×」
3.「×」
4.「〇」フルボキサミン(ルボックスⓇ・デプロメールⓇ):セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)
フルボキサミンは、CYP2D6で代謝され、CYP1A2とCYP2C19の阻害作用が強い薬剤です。
5.「×」
問273の解答:4