問238-239(衛生/実務)
70歳男性。同居している息子夫婦に付き添われて来局。
20歳の頃より喫煙習慣があり(ブリンクマン指数:1,200)、現在も1日に10本程度喫煙している。
また職業上の粉じん曝露歴があった。
数年前より労作時の息切れが出現し、徐々に症状が悪化したために近医を受診し、慢性閉塞性肺疾患(COPD)と診断され、以下の処方が出された。
(処方)
チオトロピウム臭化物吸入用カプセル18ng 1回1カプセル
1日1吸入 全56カプセル
問238(実務)
処方薬の注意すべき主な副作用はどれか。2つ選べ。
1.排尿障害
2.徐脈
3.口腔内カンジダ症
4.下痢
5.口渇
問238の解説
チオトロピウム(スピリーバⓇ):ムスカリン受容体拮抗薬
気道平滑筋のM3受容体において、アセチルコリンと拮抗し、気管支収縮抑制作用を示します。
1.「〇」副交感神経を抑制する抗コリン作用があるため、排尿障害が副作用としてあります。
2.「×」
3.「×」
4.「×」
5.「〇」副交感神経を抑制する抗コリン作用があるため、口渇が副作用としてあります。
喫煙指数(ブリンクマン指数)= 1日に吸うタバコの本数×喫煙している年数
ブリンクマン指数が400以上になると、肺がんのリスクが上昇すると言われています。
問238の解答:1と5
問239(衛生)
この男性は現在も喫煙を続けていることから、息子夫婦から、喫煙が健康に及ぼす影響を父親に説明してほしいとの依頼があった。
薬剤師がこの男性に対して行う、「喫煙と健康」に関して説明する内容として適切なのはどれか。2つ選べ。
1.COPDの最大のリスク要因は喫煙である。
2.受動喫煙は虚血性心疾患や脳卒中のリスクを高める心配はない。
3.たばこの発がん物質は主流煙に多く含まれており、副流煙にはほとんど存在しない。
4.能動喫煙の防止を目的として、健康増進法が制定されている。
5.喫煙によって薬物代謝酵素が誘導され、効果に影響が出る薬もある。
問239の解説
1.「〇」COPD(慢性閉塞性肺疾患)を発症する、最大の原因は喫煙といわれています。
2.「×」受動喫煙により、肺がん・虚血性心疾患・脳卒中・乳幼児突然死症候群などのリスクが高くなります。
3.「×」フィルターを通して喫煙者が吸う主流煙よりも、受動喫煙で人体に吸い込まれる副流煙の方が、フィルターが無い分、発がん物質などが多くなることがあります。
4.「×」望まない受動喫煙の防止を図るため、健康増進法の一部が改正されました。
5.「〇」喫煙により、CYP1A2が誘導されます。
CYP1A2で代謝される薬剤例:テオフィリン(テオドールⓇ)・オランザピン(ジプレキサⓇ)・チザニジン(テルネリンⓇ)・ラメルテオン(ロゼレムⓇ)・プロプラノロール(インデラルⓇ)など
問239の解答:1と5