第109回 薬剤師国家試験問題 問216-217(HBV) | 積小為大!!  健康・社会保険・労働に関すること

第109回 薬剤師国家試験問題 問216-217(HBV)

生物・実務
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54歳女性。数ケ月前より、咽頭痛及び頸部リンパ節腫脹を認めた。

精査の結果、悪性リンパ腫(びまん性大細胞型B細胞リンパ腫)と診断され、初回治療としてR-CHOP療法を開始するために入院となった。

化学療法施行前にB型肝炎ウイルスのスクリーニング検査を実施したところ、次の検査結果であったため、以下の処方が開始となった。

 

(検査結果)

HBs抗原(-)、HBc抗体(+)、HBs抗体(+)、

HBV-DNA量 25IU/mL(基準値20IU/mL)

 

(処方)

エンテカビル錠0.5mg      1回1錠(1日1錠)

1日1回 就寝前 7日分

問216(生物)

この患者のB型肝炎ウイルス関連検査結果に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

 

1.HBs抗原は、エンベロープに含まれる抗原であり感染の指標となる。

 

2.HBc抗体(+)、HBs抗体(+)という検査結果は、この患者が過去に組換え体HBs抗原タンパク質を成分とするB型肝炎ワクチンを接種したためである。

 

3.この患者のHBs抗体を6ケ月後に再測定して陽性であっても、B型肝炎ウイルスキャリアとはいえない。

 

4.HBs抗原(-)、HBc抗体(+)という検査結果から、この患者は急性肝炎と判断される。

 

5.HBV-DNAの検査では、宿主細胞の染色体内に挿入されたウイルスDNAのみが定量される。

 

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問216の解説

R-CHOP療法は、悪性リンパ腫の化学療法です。

R:リツキシマブ(リツキサン):抗CD20モノクローナル抗体

C:シクロホスファミド(エンドキサン):アルキル化剤

H:ドキソルビシンHydroxydaunorubicin・別名:アドリアマイシン(アドリアシン):抗腫瘍性抗生物質

O:ビンクリスチン(オンコビン):微小管阻害薬

P:プレドニゾロン(プレドニン):ステロイド

 

 

エンテカビル(バラクルード):HBVのDNAポリメラーゼ阻害作用

 

 

1.「〇」HBVの外殻(エンベロープ)を構成するタンパク質(Hepatitis B surface)をHBs抗原といい、陽性であればHBVに感染していることを示します。

(※HBe抗原が陽性:HBVの増殖力が強いことを示します。)

 

 

2.「×」HBVのコア表面を構成するタンパク質(Hepatitis B core)をHBc抗原といい、HBc抗体が陽性なら、HBVに、実際に感染したことを示します。(HBVワクチン接種では、陽性になりません。)

 

一方、HBs抗体が陽性の場合は、過去にHBVに感染し、治癒したことを示します。(HBVワクチン接種でも、陽性となります。)

 

よって、HBc抗体(+)、HBs抗体(+)という検査結果は、この患者が過去に、実際のHBVに感染したことを示しています。

 

 

3.「〇」B型肝炎ウイルスキャリアとは、HBVに感染していても発症せず、持続的に感染している状態のことをいいます。

HBs抗体は、体内からHBVが消失していても、過去にHBVに感染し、治癒していたら陽性となるので、6ケ月後に再測定して陽性であっても、B型肝炎ウイルスキャリアとは必ずしも言えません。

 

 

4.「×」急性肝炎では、HBs抗原が陽性となることが多いです。

 

 

5.「×」HBV-DNA検査は、リアルタイムPCRで、血液中のHVBのDNA量を測定します。

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問217(実務)

この処方に関して薬剤師が留意しておく内容として、正しいのはどれか。2つ選べ。

 

1.飲み忘れた場合、次の就寝前に2回分をまとめて服用する。

 

2.食事により吸収が低下するため、服用前後2時間は食事をしない。

 

3.処方された薬剤を服用中でも、化学療法を開始する。

 

4.腎機能に応じた用量調整の必要はない。

 

5.この処方は継続せず、1週間で終了する。

 

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問217の解説

1.「×」飲み忘れに気づいたときに1回分を服用しますが、次に服用する時間が近い場合は、1回分飛ばして、次の服用時間に1回分服用します。2回分をまとめて服用することはありません。

 

 

2.「〇」エンテカビル(バラクルード)は、食事により吸収が低下するため、食事の前後2時間は服用を避けます。

 

 

3.「〇」悪性リンパ腫の治療としてR-CHOP療法が予定されていて、化学療法中に、HBVが再活性化し劇症化する症例があるため、日本肝臓学会のB型肝炎治療ガイドラインでは、HBs抗原(-)でも、HBV-DNA量が基準値以上であれば、核酸アナログ製剤の服用を推奨しています。

 

(※核酸アナログ製剤:核酸に類似(アナログ)した構造を持つ薬剤で、エンテカビル(バラクルード)・ラミブジン(ゼフィックス)・テノホビル(テノゼット・ベムリディ)があります。)

 

 

4.「×」エンテカビル(バラクルード)は、腎排泄型薬剤のため、腎機能に応じ、用量調整が必要です。

 

 

5.「×」核酸アナログ製剤の投与中止を考慮する条件として、HBV-DNA量が基準値以下・核酸アナログ製剤の投与開始後2年以上経過・HBe抗原陰性などがあります。

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