問119(生物)
2種類の染色法を用いて細菌Aについて調べた。
染色法1(グラム染色)では明瞭な染色像が観察されなかったため、染色法2(抗酸染色)での染色を行ったところ、染色法2では陽性であった。
染色法1、2の染色操作を図に示した。
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細菌Aとこれらの染色法に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1.細菌Aは、ペプチドグリカン層に加えて染色法1での染色に抵抗性の細胞壁成分を持っている。
2.ペプチドグリカン層が厚い細菌では、クリスタルバイオレットとルゴール液でつくられた色素がエタノールで除去される。
3.高級脂肪酸やワックスに富む細胞壁成分を持つ細菌は、染色法2で染色されない。
4.細菌Aの細胞壁は、融点の低い脂質に富んでおり、加温すると石炭酸フクシンの透過性が増す。
5.染色法1の陽性細菌は青紫色、染色法2の陽性細菌は赤色に染まる。
問119の解説
グラム染色は、細胞壁の構造の違いを利用して染色する方法です。
細胞壁のペプチドグリカン層が厚い、グラム陽性菌は、クリスタルバイオレットにより、紫(青紫)に染まります。一方、ペプチドグリカン層が薄い、グラム陰性菌は、対比染色のサフラニンで赤色に染まります。
抗酸染色は、グラム染色では染色しにくい、脂質の多い細胞壁を持つ、抗酸菌を染色できます。
石炭酸フクシンにより、赤色に染色した後、塩酸アルコールにより、抗酸菌以外を脱色させ、対比染色のメチレンブルーで、抗酸菌以外を青色に染色します。
1.「〇」設問より、グラム染色では染色像が観察されず、抗酸染色では、陽性を示したとあるので、細菌Aは抗酸菌と考えられます。
抗酸菌は、グラム染色に抵抗性の細胞壁成分(ミコール酸)を持っています。
2.「×」ペプチドグリカン層が薄い細菌では、クリスタルバイオレットとルゴール液でつくられた色素がエタノールで除去される。
3.「×」高級脂肪酸やワックスに富む細胞壁成分を持つ細菌は、染色法2で染色されます。
4.「×」細菌Aは、抗酸菌と考えられるので、脂質の多い細胞壁を持つので、融点は高い。
5.「〇」グラム染色では、グラム陽性菌は、紫(青紫)色・グラム陰性菌は、赤色
抗酸染色では、抗酸菌は、赤色・抗酸菌以外は、青色
グラム陽性菌:ブドウ球菌・肺炎球菌など
グラム陰性菌:大腸菌・緑膿菌など
抗酸菌:結核菌・らい菌など
問119の解答:1と5