問115(生物)
ペニシリン耐性の黄色ブドウ球菌が発現するβ-ラクタマーゼを精製し、反応速度論的解析を行った。
β-ラクタマーゼの反応は以下のミカエリス・メンテン式に従うものとする。
v = Vmax ×[S]/Km +[S]
異なる濃度のペニシリンを含む10mLの反応液中に1ngのβ-ラクタマーゼを加え、反応生成物の量を測定したところ、ペニシリン濃度([S])と1分間に生じる反応生成物の量(v)の関係は図1のようになった。
また、ペニシリン濃度の逆数(1/[S])と1分間に生じた反応生成物量の逆数(1/v)をプロットしたところ、図2のようになり、回帰直線の式は
1/v =75.0 × 1/[S]+ 15.0であった。
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以下の記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
なお、測定中のペニシリン濃度の低下は無視できるものとする。
1.β-ラクタマーゼは、酸化還元酵素である。
2.反応液中のβ-ラクタマーゼを2ngにしても、単位時間あたりの反応生成物量は変わらない。
3.この酵素のVmaxの値は0.067nmol/mL・min(有効数字2桁)である。
4.この反応系に競合阻害薬を加えて実験した場合、見かけ上のKmは5.0nmol/Lより大きくなる。
5.この反応系に非競合阻害薬を加えて実験した場合、図2の回帰直線の傾きは小さくなる。
問115の解説
1.「×」β-ラクタマーゼ(酵素:E)は、ペニシリン(基質:S)のβ-ラクタム環を加水分解して不活化させます。
2.「×」β-ラクタマーゼ(酵素:E)の量を増やしたら、単位時間あたりの反応生成物量は多くなると考えられます。
3.「〇」図2の1/vの軸と回帰直線が交差する所が、1/ Vmaxとなるので、
1/ Vmax=15 ⇔ Vmax=1/15≒0.067
(ミカエリス・メンテン式(v = Vmax ×[S]/Km +[S])の逆数は、1/v = Km +[S]/Vmax ×[S] ⇔ 1/v = Km/Vmax ×[S]+[S]/Vmax ×[S]⇔ 1/v = Km/Vmax ×1/[S]+1/Vmax)
4.「〇」図2の傾き=Km/Vmaxなので、75= Km/Vmax ⇔ Km=75×Vmax=75×1/15=5
KmはVmax /2のときの基質濃度[S]なので、酵素と基質の親和性が高い程、小さくなります。
そのため、競合阻害薬を添加すると、Kmは大きくなります。
5.「×」非競合阻害薬を添加した場合、Kmは変わらず、Vmaxは小さくなるので、図2の回帰直線の傾きは大きくなる。
問115の解答:3と4