問344
51歳男性。身長170 cm、体重57 kg。
健康診断の胸部X線検査にて異常が見られたため、胸部CTなど精査を行ったところ、EGFR遺伝子変異陽性、進行・切除不能(Stage Ⅳ)の非小細胞肺癌と診断され、以下の処方で治療を開始することとなった。
(処方)
アファチニブマレイン酸塩錠40 mg
1回1錠(1日1錠) 1日1回 起床時 14日分
薬剤師が本剤の服用開始にあたり、患者に指導すべき内容として、
適切でないのはどれか。1つ選べ。
1.食事の影響を回避するため、本剤服用後1時間は食事をしない。
2.副作用発現の可能性が高まるため、グレープフルーツを摂取しない。
3.咳嗽、発熱などが生じた場合は、すぐに医師に連絡する。
4.下痢が発現した際には、止瀉薬を直ちに服用する。
5.爪囲炎やざ瘡様皮疹対策として、保湿剤を塗布する。
アファチニブ(ジオトリフⓇ):抗悪性腫瘍薬(チロシンキナーゼ阻害薬)
アファチニブの作用機序は、EGFR(ErbB1)・HER2(ErbB2)・HER4(ErbB4)のチロシンキナーゼ活性を阻害するので、受容体からのシグナル伝達を遮断し、腫瘍細胞の増殖を抑制します。
※EGFR:Epidermal Growth Factor Receptor:上皮成長因子受容体
HER2:Human Epidermal growth factor Receptor 2:ヒト上皮細胞増殖因子受容体(細胞増殖に関係する蛋白)
1.「〇」食事の前後にアファチニブを服用すると、吸収が低下するため効果が減少します。
そのため、設問のように1日1回起床時などの空腹時(食前1時間以内、食後3時間以内を避ける)に服用します。
2.「×」アファチニブは、P-糖蛋白(P-gp)による排泄で、CYPによる代謝の影響は低いので、グレープフルーツの摂取については指導しなくてもよい。
3.「〇」アファチニブの副作用として、間質性肺疾患・肝機能障害・心障害・下痢・皮膚障害(口内炎・爪の異常)などが知られています。
間質性肺疾患の初期症状(呼吸困難・咳嗽・発熱など)が現れたら、すぐに医師に連絡するよう指導することは大切です。
4.「〇」アファチニブを服用中に下痢がみられたら、担当医の指示に従って下痢止めを服用します。
5.「〇」アファチニブを服用中は、保湿機能が弱まるため、爪囲炎やざ瘡様皮疹が現れることが多いので、保湿剤などで対応します。